アブロニアの価格高騰が続く理由 — CITES規制と国内CB市場の現在
アブロニア属のトカゲは、メキシコの雲霧林に生息する美しいグリーンの樹上性トカゲです。幼体時はシルバーの体色をしており、成長するにつれてエメラルドグリーンに変化していく — その「色の移り変わり」が多くの愛好家を魅了してきました。
しかし2017年にCITES(ワシントン条約)附属書に掲載されて以降、野生個体の国際取引が厳しく制限されており、国内の流通量は年々減少。それに伴い、価格の高騰が続いています。
この記事では、アブロニアの価格がなぜ上がり続けているのか、その背景と今後の見通しについて整理します。
そもそもアブロニアとは
アブロニア(Abronia)は、メキシコからグアテマラにかけての中米の山地に生息するアリゲータートカゲ科のトカゲです。最も人気のある種はアブロニア・グラミネア(Abronia graminea)で、「メキシカンアーボリアルアリゲーターリザード」とも呼ばれます。
標高1,800〜2,700mの雲霧林という特殊な環境に棲んでおり、飼育下でも20〜25℃程度の冷涼な温度帯と50〜70%の湿度を維持する必要があります。日本の夏場のエアコン管理は必須で、温度管理を含めた飼育難易度は中級〜上級者向けとされています。
価格推移 — 3年で2〜3倍に
以前は7〜10万円程度で手に入ったアブロニア・グラミネアですが、現在は国内CB(国内繁殖)個体でオス24万円、メス25万円という価格帯が一般的になっています。
イベント価格でもベビーで15万円前後、アダルトのペアともなると50万円近くになることも珍しくありません。数年前とは完全に相場が変わりました。
背景にある3つの要因
1. CITES附属書への掲載
アブロニア属は2017年1月よりCITES附属書I・IIに掲載されています。附属書Iに掲載された種は商業目的の国際取引が原則禁止、附属書IIの種もメキシコが野生個体の輸出枠をゼロに設定しているため、野生個体の合法的な輸入はほぼ不可能な状態です。
2. メキシコ国内での保護強化
メキシコ政府は自国の固有種であるアブロニアの密猟・密輸に対する取り締まりを強化しています。2019年にはアブロニアを含む爬虫類の違法取引に関する大規模な摘発が行われ、国際的にも報道されました。
こうした原産国の動きにより、海外からの供給ルートはほぼ断たれている状況です。
3. 国内ブリーダーの供給が追いつかない
アブロニアは繁殖の難易度が高い種です。その理由は主に以下の3点です:
- クーリング(低温処理)が必須 — 繁殖には15℃前後の低温期間を数ヶ月設ける必要がある
- 産仔数が少ない — 1クラッチあたり5〜12頭程度。年1回の繁殖が一般的
- 胎生(卵胎生)であること — 卵ではなくベビーを直接産むため、母体への負担が大きく連続繁殖が難しい
アブロニアの繁殖に成功している国内ブリーダーは限られており、需要に対して供給がまったく追いついていないのが現状です。SNSでの人気拡大がさらに需要を押し上げている側面もあります。
SNS・YouTubeでの人気拡大
近年、爬虫類系YouTuberがアブロニアのお迎え動画やベビーの成長記録を投稿し、「幼体のシルバーから成体のグリーンへの色変わり」が話題になっています。この視覚的なインパクトがSNSとの相性が良く、XやInstagramでの露出が増加。結果として「アブロニア」の検索需要も着実に伸びています。
2025年 CITES COP20での動き
2025年11月にウズベキスタン・サマルカンドで開催されたCITES第20回締約国会議(COP20)では、爬虫類を含む附属書の改正が審議されました。
アブロニア属に直接影響する附属書の変更はありませんでしたが、爬虫類全般の規制強化の流れは続いています。
日本国内の法規制について
日本では「種の保存法」に基づき、CITES附属書I掲載種は「国際希少野生動植物種」として登録・管理されています。アブロニア属のうち附属書Iに掲載されている種を売買する場合は、環境省への登録が必要です。
また、2026年の動物愛護法改正の議論では、爬虫類の販売に関する規制強化や、両生類を新たに規制対象に含めることが検討されています。
今後の見通し
結論として、アブロニアの価格が今後下がる可能性は低いと考えています。その理由は:
- CITES規制が緩和される見込みがない
- 国内ブリーダーの数が劇的に増える要素がない
- SNSを通じた需要の拡大は今後も続く
- 動物愛護法の改正により販売ハードルが上がる可能性がある
購入を検討している方へ
- 必ず国内CB個体を選ぶ — 出所が不明な個体は避け、ブリーダーの繁殖記録がある個体を選びましょう
- 信頼できるショップ・ブリーダーから購入する — 爬虫類イベントでの対面販売が安心です
- 飼育環境を先に整える — 特に夏場のエアコン管理は必須。購入前に温度・湿度管理のシミュレーションを
- ペアでの飼育を検討するなら予算は40万円以上 — 繁殖を視野に入れるなら相応の投資が必要です
「高いから」という理由だけで飼育を諦める必要はありませんが、価格に見合った準備と知識が求められる種であることは間違いありません。衝動買いではなく、十分な情報収集のうえで判断してください。